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高齢社会による病院外来の未来

高齢社会により未来の日本には暗い兆ししかないということは随所で論じられていますが、その一部は少なくとも病院の外来では現実のものとなりつつあるように思います。

 河合雅司氏の著書から引用してみます。

 

 

「未来の年表」p.146より

都会の1つしかないエレベーターの前で順番待ちをする高齢者が長い列をつくる。乗客は電車やバスの乗降に時間がかかるため、公共交通機関の遅れは日常茶飯事だ。かたや百貨店の売り場では、耳の遠くなった高齢者への商品説明、よぼよぼの店員が多くの時間を取られる。

 

「未来の年表2」 p.86より

誰しも80代となると、若いころと同じようにはいかない。判断力は鈍り、機敏さがなくなる。駅の階段を上り下りするだけも一苦労だ。一人で外出するとなれば、誰かに手助けを求めようとしてもままならない。

 

p.87より

高齢者の外出が増えれば、電車のダイヤ乱れも懸念される。現在、東京や大阪といtった大都市では、多い時間帯ならば、数分に1本の間隔で電車を走らせている。そんな芸当が可能なのは、乗客の大多数がテキパキと動ける世代だからである。最近、電車内には高齢者が増えてきた印象を持つが、その高齢者はまだ、こうした「人の流れ」についていける世代である。

 

p.89-90より

 

だが、判断力が衰えた「高齢化した高齢者」の買い物客はそうはいかない。店員から商品説明を受けても1回ではなかなか理解できない。支払いに戸惑い、さらに時間がかかったりもする。(中略)

 売り場ではコストを抑制するため、ギリギリの店員でしのぐ小売店は少なくない。高齢者が増えるからといって、店員を増やせるところばかりではないだろう。役所の窓口で待たされる時間が長くなれば、その人の会社の労働生産性が落ちることにもなる。

 

最初にこの本を読んだ時はそんなものかあくらいに思っていましたが、最近の内科外来の高齢者の増加をみるとその意味がかなり切実に理解できるようになりました。

 

長い医療費抑制策のため、病院はどこも経営が火の車です。消費税増税も医療費に転嫁できないためいわゆる値上げもできず。増税分はほとんど持ち出し。スナック菓子や配達料、銀行手数料に至るまで値上げ値上げの時代に値上げできないのが病院業界。診療報酬からの補填はほとんどされてないに等しく、増税後バタバタ倒産してもおかしくない。

 

そのため日本の病院外来ではとにかく薄利多売、数を裁くことが求められます。多くの総合病院では30分に5-6人とか、5分に1人くらいのペースで予約を詰め込んでいるところも多いです。

 

しかし、高齢者というのは「呼ばれて待合から診察室まで歩いてドア開けて入って荷物置いてよっこらしょと椅子に座るまで」でもう2分くらい使います。耳が遠くて聴こえない、説明してもよく理解できないので診察と説明にかかる時間と労力がかかる。次回外来の前に事前採血してねと言っても分かっているのかどうか定かでないし、翌日には覚えてないかもしれない。事務や看護師もこんな患者ばかりでは疲弊します。

 

人の流れにテキパキついていける世代ではないからです。百貨店にくる世代より病院外来というのはすでに「高齢化した高齢者」が多い世界です。病院の人員スタッフも潤沢ではなく、医師や看護師、事務の手間も増えるばかり。外来における高齢者の割合が増え続ければ、とても5分に1人なんていうペースでは裁けなくなるでしょう。

 

そもそも雑用が多すぎます。カルテ記載はちゃんとしないと厚労省から指導が入ったりするので意外と時間を取られる。訴訟対策としてもカルテ記載は絶対です。次回の予約をとって予約票を印刷、残薬数を聞いて調整して処方する(高齢者相手だと次回の日程と薬の余りがあるのかないのか確認するだけでも数分~5分はかかる)、処方箋を印刷して、次回の採血およびその他検査オーダーを入れる。あと忘れてはならないのが、保険会社の診断書に生活保護の医療要否意見書、介護意見書、訪問看護の指示書、他院へ行くなら診療情報提供書etc。これら書類作業は年々増えるばっかりです。

 

こういった作業のほとんど全てはちょっと医療現場での経験を積めばぶっちゃけ医師でなくてもできる完全なる事務作業です。カルテ記載ですら昨今は日本のクリニックでも医療クラークを雇って入力させる所が出てきましたがまだまだごく少数です。今後も少数でしょう。国の医療費抑制策により十分なクラークを雇うカネなんかないからです。

 

今後ますます病院外来に高齢者が溢れかえり、外来をこれまでのように回すことはどんどん困難になるでしょう。現状でも5分に1似んなんて事実上回せてないのですから当然です。診察する医師にとっても、とにかく耳元で張り上げるような大声で叫ばないと聴こえないケースが激増し、それでも理解ができないから説明は思い切り噛み砕いて説明する。とにかく疲れますし時間がかかります。しかも高齢者の場合、ある日突然身内や家族が現れてもう一回説明しろとか言われることもあります。そのくせ同居もしないし面倒も見ない家族ばかり。書類も増えるばかり。予約外来と言いつつも予約してない飛び込みだってくる。それで予約時間を過ぎれば「まだですか?」などとクレームが入ってきたりする。数を裁けといいながらカルテ記載の簡略化も認めない。訴訟もどんどん厳しく、理不尽になるばかり。おバカな裁判官はそこらじゅうに、ワープア化し仕事をとれない弁護士がハイエナのように医療機関を狙っています。まるでアメリカです。もう医療現場は地獄しかありません。もちろん患者サイドにとっても待ち時間が延々長くなり、すぐには診てもらえなくなって地獄でしょうけれど。

 

上記の本にはこんな文言もあります

多くの80台が街を闊歩していることを前提として対応策を考え、社会やビジネスの有り様を変えていくことが求められている。

ビジネスは変えられるでしょう。

しかし基本的に政府の診療報酬点数にしばられ自由な価格設定もできない保険医療が変えられるでしょうか。医療費抑制策が転換されることも未来永劫絶対にあり得ません。

 

医師や医療関係者はとにかく逃げるのがベストだし、患者も大金を出せる人は会員制のメディカルクラブで手厚い診療を受けられるが、そうでない人はどんどんまともな医療を受けにくくなる格差社会になるでしょう。一体日本の医療はどこへ向かうのでしょうか。

 

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